昨夜はぐっすり寝れなかった。外は、しとしとと雨が降っている。
雨の中歩き続け、22番札所、平等寺に到着。
朝早いため、人とはほとんど出会わなかった。
トンネルをいくつか通った。歩いてトンネルを通ることは普段あまりない。トンネル内は、薄暗いライトで照らされ、これまで歩いてきた世界が一瞬途切れる空間である。その空間を抜けると、外は何か別世界に来たような明るさであった。
海沿いの道を歩き、由岐駅の近くの小さな食堂で肉うどんを食べる。食堂ではテレビが流れ、新聞が置いてあった。しばらく日常世界の情報から離れていたので、新聞とテレビの情報にむさぼりつく。
由岐町に入る。町を歩いていると、ある家の前でおばさんが声をかけてきた。不意に家から出てきて話しかけられたのでびっくりした。
そのおばさんは500人以上のお遍路さんと出会い、お接待をしてきたそうだ。お遍路さんに手作りのフクロウの人形を配り、お遍路さんに道案内をしている。フクロウには福が来るとか、「不苦労」で苦労がなくなるとか、知恵の神であるとか、フクロウにまつわる話を教えてくれた。
これまで出会ってきたお遍路さんの話をいろいろ聞かせてくれた。よく喋るおばさん。私は少し疲れていて先に進みたかったのだが、1時間ぐらい家の前で立って話を聞いてしまった。
おばさんと私の会話の間、おばさんの息子さんがずっと側にいた。彼は難病を抱えているそうだ。
おばさんは、私が持っていた杖を見て「息子に触らせてください」と言ってきた。私の杖にそんな御利益があるのだろうか。私は戸惑いながらも、彼に杖を渡した。
彼はぎゅっと私の杖をにぎりしめた。
しばらくの間、私の中で時は歪み、ねじれ、ぐるぐると回った。
手元に帰ってきた私の杖は重い感じがした。
遍路を歩いていると、自分の予想外の出来事が待っている。「お遍路さーん」と声をかけてくる「お接待」の瞬間は、突然やってくる。人生においても人との出会いは、どこでどのように、誰と出会うか分からない。
おばさんは、お遍路さんとの出会いを「縁」であるという。お遍路での人との出会いは、「縁」を実感できる瞬間であった。
私はポケットにフクロウの人形をしまい、おばさんと別れて先へ進んだ。遍路での別れと出会いは一瞬であるが、フクロウだけは私のポケットに残り続けた。









